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Vannusals A and Bの立体構造の訂正と全合成

1.Total Synthesis and Structural Revision of Vannusals A and B: Synthesis of the Originally Assigned Structure of Vannusal B
&
2.Total Synthesis and Structural Revision of Vannusals A and B: Synthesis of the True Structures of Vannusals A and B
(J. Am. Chem. Soc. 2010, ASAP)

Nicolaouの論文(2つともarticle、communicationはAngewに2008~2009年に報告)
今年、Nicolaouは論文が少ないなと思っていたら、これの完成に力を入れていたようです
内容は
1つめの論文が 1999年に報告されたオリジナルの構造(左側)の合成です
2つめの論文が類縁体の合成~構造の訂正~真の天然物構造(右側)の全合成です

0511-1.jpg

勉強になるのは1つめの論文ですが2つめの論文にしかない反応(触媒)をここでは紹介します
0511-6.jpg


丸で囲った部分のアルコールの酸化反応です
オリジナル構造の合成の時はTEMPOを使っていました
しかし、天然物合成の時にはTEMPOではなく1-Me-AZADOを使っています
このAZADOを使った酸化反応は東北大学の岩渕らによって2006年に報告されました
(J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 8412)
1-Me-AZADOはTEMPOよりも立体障害の少ないため高活性な触媒です

「他の研究者が使ってはじめて価値がある反応が開発できたといえる」と反応開発の研究室ではよく言われます
全合成のかなり後半でも使える(=多くの官能基に害がない)ということから
この酸化反応はかなり使える反応であることがわかります
これをNicolaouが使ったことで今後広く使われることになると思います

日本人が開発した反応が全合成のスタンダードになる(かもしれない)と考えるとわくわくしますね

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AZADO

AZADOは日産化学によりバルク製造可能なレベルまできているようですよ。学会や展示会宣伝してました。

Re: AZADO

Nicolaouはおそらく日産化学から手に入れたみたいですが
日本だと普通に、和光から買えるみたいですね
100mg 8000
いまのところ結構なお値段です

和光の
http://www.wako-chem.co.jp/siyaku/journal/org/pdf/org29.pdf
に解説がありました
日本語でかつ論文よりも詳しいのでおすすめ

No title

Nicolaouらの最初の論文(Angew 2008)でもAZADOを使っています。たしか、ちょうどそのごろ、渋谷さん(AZADOの論文JACS 2006の著者、岩渕研の助教)はNicoaou研に留学中だったと思います。全合成中ではTEMPOも問題なく使えると思いますが(Full Paperを参照)、活性はAZADOは5~10倍も高いですし、宣伝活動もよかったと思います。値段は高いけど、やっぱり使えますね。

Re: No title

>渋谷さん(AZADOの論文JACS 2006の著者、岩渕研の助教)はNicoaou研に留学中だったと思います。

なるほど、そういう背景がありましたか
ただ、2008年はTEMPOですね(Angew, 2008, 8605)
AZADOは2009年の論文で初登場だとおもいます(Angew, 2009, 5642 & 5648)

全合成でAZADOを使っている理由が
1.
TEMPOだと量が必要なのでそれが原因で汚くなる?それとも反応がいかない?のでAZADOなのか
2.
(どちらでもいいので)単純に実験者の趣味でAZADOなのか
1と2でAZADOの価値は大きく異なります
1だとAZADOはきわめて優れた触媒といえます
一方、2だとするとAZADOは現状、費用(↓参照)の問題を考えると微妙です


TEMPOは5g 7400(TCI、AZADOの約1/50)です
今回の論文だとTEMPO(1 equiv)vs AZADO (0.1 equiv)なので割高です
活性が5~10倍とのことですがこの場合でもやはり割高です


今回は費用のことをいいましたが
使える触媒であることは間違いないため
もっと売れて値段は下がると思います
そうすれば、TEMPO酸化ってなに?という日が来るかもしれません

こんなにコメントがつくのも珍しいですね

それだけAZADO酸化は注目度が高い反応ということだと思います

No title

今さらですけど、コメントさせていただきます。
TEMPOは1級アルコールを(一般的には)選択的に酸化できるのが
便利なので、価格の問題なんかも考慮して、2級も酸化できる
1-Me-AZADOとは住み分けができるかもしれません(上記の論文の
場合2級は酸化されていませんが)。第1世代と第2世代のGrubbs
触媒のように。

Re: No title

> 今さらですけど、コメントさせていただきます。
コメントは遅くても大歓迎ですよ♪

今回の場合1-Me-AZADOで1級アルコールのみが酸化していますが
1-Me-AZADOよりも活性が高いAZADO(Meがない)だともしかしたら
2級部分も酸化されるのかもしれません

そうだとすれば
TEMPO, 1-Me-AZADO, AZADOの3種類を使い分けることで
作り分けができるすばらしい酸化反応系になるかもしれませんね

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