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有機触媒でカップリング?

Organocatalysis in Cross-Coupling: DMEDA-Catalyzed Direct C-H Arylation of Unactivated Benzene
(J. Am. Chem. Soc. 2010, ASAP DOI: 10.1021/ja103050x)


有機触媒を使った反応の論文を見ない日がないといっても良いほど有機触媒は盛んに研究されています
しかし、有機触媒にはできない反応としてはカップリング反応があります
酸化的付加、還元的脱離といったステップは中心元素(金属)が複数とれる遷移金属ならではと言えると思います
個人的にはこの手の反応のブレークスルーになるのは超原子価ヨウ素だと思っています


それでは今回の論文
ベンゼンとAr-Xのクロスカップリング反応がジアミン(N,N’-dimethylethane-1,2-diamine; DMEDA)を触媒とすると反応が円滑に進行したという論文です
0803-1.jpg

過剰量(溶媒)のベンゼンを使用しているものの、触媒と塩基(KOtBu)だけで遷移金属なしでもカップリング反応が進行したというのは驚きです
さて、これは正しいのでしょうか?
例えばcis-1,2-cyclohexanediolとtrans-1,2-cyclohexanediolで触媒活性は大きく異なる(81%と22%)
他の塩基(NaOtBuなど)に変えると反応はほとんど進行しない
といった点はこんなにも大きく活性が違っていいものかと思います


これと似たような話があります
2003年、遷移金属触媒を必要としないカップリング反応が報告されました
0803-2.jpg

(Angew. Chem. Int. Ed. 2003, 42, 1407)
tetrabutylammonium bromide、Na2CO3、水溶媒にマイクロウェーブを当てるとカップリングが進行するという内容(VIPにも指定されています)
しかし、これには落ちがあります(J. Org. Chem. 2005, 70, 161)
用いたNa2CO3にPdが超微量ながら含まれていたのです
超微量のPdによって反応は進行していましたという落ちでした



話を戻すと
KOtBuに関してはメタルが精製したものを試して、活性に違いはなかったと本文にあります
ただ、超微量の遷移金属でも反応は行った例があるので一度全ての試薬をICP発光分析で確かめてほしかったですね
ppbレベルで(活性種となりうる)遷移金属が含まれていないことが証明できます
ここまでやる必要がこの論文ではあったと思います

今回の場合、実験で再現をとるよりも、機器が身近なところにある方が機器分析する方が簡単です

身近に機器がある方!測定して、結果を教えてください!!
もう少し調べてみました
* がついているのは二人
Kwong, F. Y.に関して
http://www.polyu.edu.hk/abct/staff_kwongfukyee.php
もう一人の
Lei, A.に関しては
http://chemistry.gsu.edu/faculty/Huang/Aiwen%20Lei,%202009-5.pdf
ともにバックグラウンドはPdなどの遷移金属を使った反応開発をいくつも発表 (査読あり)しており、今回の反応について確かな知識を有していると考えられます

当然、Pdなしのカップリング知っていたと思います
KOtBuを精製して試したといった記述もこれを知っているからこそ書かれたと思います
でも、ではなぜそういった論文を引用しないのか?
また、KOtBu以外はなぜ疑わなかったのか?
というあたりの疑問がすぐにでてきます
今回僕が引用した論文はPdが塩基に含まれていましたのでKOtBuを精製したのでしょう
しかし、塩基以外には遷移金属が含まれていないと断言できるほど純度の高いものを使用したのでしょうか?
この部分がこの論文の核心です
遷移金属なしでカップリングが行くのであればたとえDMEDAを等量使ったとしても十分価値があると思います

この疑問に対して回答できるデータ(系中にはまったく活性を示す遷移金属が存在していない)を示す手段はわかっています
それなのに、そのデータなしにこの段階でacceptの判断をしたレフリーが最も責任が大きいのかもしれません
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テーマ : 化学
ジャンル : 学問・文化・芸術

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No title

Chinaからの論文には怪しげなものが多いのかもしれませんが、わざわざ例を引っ張り出してことさらに書くのは如何なものでしょうか。日本の文献にも怪しげなものはありますが、それを例に出して「また日本から怪しげな論文が・・・」と書かれたりしたら、まじめに仕事をしている日本人なら嫌な気分になるのではないかと思います。一度怪しげな文献を出した当本人からのものなら疑われても仕方ないかもしれませんが、国という単位で括るべきものではないと思います。

No title

出自をもって色眼鏡をかけるのは確かに感心しませんね。
ただ個人的には、今回にしろ前回(未だにASAPの最後に晒されていますが)にしろ、
通したレフェリーの質も問題のように思います。
前回はグローブボックス中で再試させるだけで判明したでしょうし、
今回のはユーキ氏が仰るように、微量元素分析の結果を載せるよう義務付けておけば
読む側も下種の勘繰りをせずに済むのになぁ。

Re: No title

インドや中国は論文数が増えている一方で?がつく論文も多いと感じていますが、
だからといって同列にして疑うのは間違っていますね
指摘に対応する部分は削除しました
日本人だろうがアメリカ人だろうが怪しいものは怪しいとおもいます
ただ、そんな常識はずれこそがブレークスルーなのかもしれませんが。。

Re: No title

JACSに投稿されている論文が毎年(爆発的に)増加しているために
適切なレフリーの確保も大変なのかもしれません

しかし
レフリーの質は論文雑誌の質を決める重要な点です
質を上げるのにもっとも簡単な方法としてはediterを増やせばいいのです
適切なレフリーの割り振りと最終判断ができるediterがいれば質は必然と確保されます
OLはAssociate Editors 10人
JACSは23人
投稿数、投稿されてくる領域の広さを考えれば明らかに人数不足だと思います
ACSの機関誌なんだからもう少し何とかしてほしいと思います

このままだと10年後JACSのIFは大きく下がるかもしれませんね

No title

数年前から遷移金属なしの触媒的カップリングの疑わしさは問題になってますね。
主も挙げているように、いくつかの検証・反証論文も出ています。
だからこそ、遷移金属なしの触媒的カップリングを論文にする際には、それを証明する
慎重さが求められます。少なくとも現在においては。

論文誌の信頼度を維持するには、レフリーの質は重要ですね。

Re: No title

JACSほどの雑誌ならば
実験の確認、証明にしっかりと時間をかけて
読み手があやしいと思うような点を排除する価値はあると思います
(レフリーも研究者が気づかない点を指摘するために存在します)

ただ、一方で
論文の数が研究費などにつながっていることも事実です
残念ながら
多少荒い点があっても数が多い方が研究者としては高い評価を受けるでしょう


疑問点が残ってしまうような論文もだめだけど
だからといってあまりこだわって研究してもいつまでも論文が出ないのでだめ
難しいところですね

No title

通りがかりで、今さらながらコメントさせていただきます。
私がこの論文を見たときには、「あー、そういうこともあるかもなー」って感じでした。
論文の書き方にも問題はあるんですが、脱離基の無い芳香環へのカップリングっていうと、全部が全部、遷移金属が関わらなきゃいけないって、みなさん、考えちゃうんですかね?いろんなブログを見たりすると、ベンゼン環が二重結合の塊だってことを結構失念されておられる印象を持ちます。

本文中にも言及がありますが、おそらく、本反応はラジカル機構で進行している可能性が高いと思います。ヨードベンゼン誘導体に対して、KOtBu等の強塩基は一電子移動を容易に起こし得ますから、それによって生じたアリールラジカルが溶媒のベンゼンの二重結合に付加します(Homolytic aromatic substitution)。溶媒量の芳香環とラジカル的にカップリングさせるこの手の反応は古くはMeerwein arylation 等を用いたものがけっこう報告されています。

極めて似ている反応が2008年に名古屋大学の伊丹先生が報告していますね(Org. Lett. 2008, 10, 4673-4676)。本論文の著者らもこの論文を引用しており、ラジカル捕捉剤を加えた実験を行うなど、ラジカル機構を念頭においているようです。

触媒のジアミン等の効果は難しいですが、アミンは一電子移動を促進したり、ラジカルアニオンを安定化することが一つの考察として考えられるでしょうか。

反応形式だけ見ると、そんなに不思議ではないので、そういう意味ではJACSにふさわしいか、って議論がまだあるとは思いますが。

いずれにせよ、反応式だけを見て、「C-H活性化、カップリング反応だから、遷移金属のコンタミを常に疑わなきゃいけない」っていうのはいかがなものでしょうか?反応の結果は一緒でも、遷移金属が一切関わらない反応経路を経ている場合もあると思います。今回は、フリーラジカルの関与を強く示唆する実験結果が示されています。

「中国人の論文が怪しい」と難癖をつけるのは簡単ですが、その前に、多角的な視野で論文を見たほうが良いと思います。私も含めてですが、自分の知識の狭さを棚にあげて、すぐに「中国人は怪しい」「レフリーの質が低い」っていう議論になってしまうのはいただけません。

Re: No title

(訪れる人が増えているのもありますが)
コメントが多いのは
やはりこの論文に関心を持った人が多いということでしょう

Org. Lett. 2008, 10, 4673-4676はsupportingで微少量金属の分析もきちんとしたことが書かれています
相手がヘテロ環だからそんなこともできるのかなと納得した人が多いということもあるかもしれませんが
(疑いそうな点をつぶして)
納得してもらうためのデータを示している点は異なりますね

多角的な視野で論文を見るのも重要ですが疑問を持つことも重要だと思います
今回の場合、疑問のほうが強かったということです
そしてそう思った人が多いためか?
今の段階で
この論文まだページ番号がついていません
微少金属を確認して、抗議した人がいるのかもしれませんね


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